工場で配管の腐食検査、どうやっていますか?
おそらく多くの工場では、検査会社に委託して定期的に非破壊検査をやってもらっている。でも 「どの配管を検査に出すか」の判断 は、かなり属人的になっていませんか?
ベテランの方が経験と勘で「ここはそろそろ危ない」と判断して、検査会社に依頼する。長年やってきた人にしかできない判断が、現場を支えている。
でもそれって、裏を返せば その人がいなくなったら誰も判断できない ということでもあります。
この記事では、配管の腐食検査における属人化の問題と、映像×AIを使ったスクリーニングという選択肢についてお伝えします。
ベテランの勘で回っている配管検査の実態
配管の腐食は外から見えにくい。だから非破壊検査を検査会社に委託するわけですが、工場の配管は数が膨大です。全部を毎回検査するわけにはいかないので、「どこを優先的に検査するか」を絞り込む必要がある。
この絞り込みを、今はベテランの経験と勘でやっている現場がほとんどです。
判断の根拠になっているのは、たとえばこういう要素。
- 目視の感覚(表面の状態を見て「そろそろ怪しい」と感じる)
- 過去にその箇所で漏洩が起きたかどうか
- 中を流れている流体の種類(腐食しやすいかどうか)
- 屋外で雨ざらしなのか、屋内なのかといった環境条件

これ自体は理にかなった判断です。現場を長年見てきた人だからこそできる、複数の要素を総合的に読む力。
問題は、その判断プロセスが言語化されていないこと。
ベテランが異動や退職でいなくなったら、残された人は耐用年数ベースで一律に判断するしかなくなる。それだと、本当に危ない配管を見逃すリスクもあるし、まだ大丈夫な配管まで検査に出してコストがかさむ。
属人化は、いま回っているからこそ見えにくいリスクです。
配管に限らず、保全方式そのものの選び方で迷っている方は、こちらも参考になります。
予知保全と予防保全の違い、どっちを選ぶべきかを現場目線で解説しています。
映像×AIで「検査すべき配管」をスクリーニングする
この属人化を解消する一つの方法が、配管表面の映像をAIで解析するスクリーニングです。
やることはシンプルで、配管の表面を撮影して、その映像をAIに読み込ませる。AIが表面の状態から腐食の度合いを判定して、「この配管は要検査」「この配管はまだ大丈夫そう」と振り分けてくれる。
いわば、非破壊検査の前段階のフィルターです。
全配管を検査会社に出す代わりに、まずAIでスクリーニングして、怪しいものだけをプロに依頼する。
これだけで、検査の優先順位づけがベテランの勘からデータベースの判断に変わります。
撮影するのは配管の表面だけなので、検査のために設備を止める必要もない。通常の巡回点検の中で写真を撮っていくイメージです。
精度は約80%。だからこそ「スクリーニング」として使う
ここで正直にお伝えしておくと、AIの判定精度は100%ではありません。だいたい80%くらいです。

「80%じゃ不安だ」と思うかもしれません。
でも、考えてみてください。今の状態は、ベテランの勘と経験で判断している。そのベテランがいなくなったらどうなるか。80%の精度でも、属人化した判断がゼロになるよりはるかにマシです。
そしてここが大事なポイントなのですが、AIスクリーニングは最終判断ではなく、フィルターです。
AIが「要検査」と判定した配管を、最終的には検査会社のプロがしっかり確認する。AIが見落とした残りの20%も、定期検査のサイクルの中でカバーしていく。
つまり、AIに100%を求めるのではなく、「検査対象を絞り込む」という役割に徹してもらう。
この使い方なら、80%の精度でも十分な価値があります。「全部をプロに頼む」から「AIで絞ってからプロに頼む」に変えるだけで、コストも判断の再現性もまるで違ってくる。
ChatGPTに配管の写真を投げても判定はできない
「それならChatGPTに写真を送ればいいんじゃない?」と思った方もいるかもしれません。
結論から言うと、生成AIでは配管の腐食判定はできません。

ChatGPTのような生成AIは、汎用的なタスクが得意です。文章を書く、一般的な画像の内容を説明する、といったことは得意。
でも、配管の腐食判定はまったく別の話です。
なぜかというと、配管の腐食を正しく判定するにはドメイン知識が必要で、かつ現場の状況ごとに判断基準が変わるから。
同じような見た目の表面でも、流体の種類や設置環境、過去の補修履歴によって「危険」の意味が変わる。こうした判断を正しく行うには、人間の検査員が持っている判断基準や過去の膨大な検査事例を、パターンとして学習させる必要がある。
これは汎用AIの守備範囲ではなく、専門のAIモデルを構築できる会社に依頼すべき領域です。
「AIで配管検査」と聞くと手軽にできそうに聞こえますが、ここには専門性が要る。安易に試して精度が出ず、「やっぱりAIは使えないね」と結論づけてしまうのが一番もったいないパターンです。
配管以外の分野でも、AIを活用した予知保全の事例が増えています。
予知保全×AI活用事例5選。導入企業の実際の効果を紹介しています。
属人化を脱却する第一歩は「判断をデータに置き換える」こと
配管の予知保全というと大げさに聞こえるかもしれませんが、やっていることはシンプルです。「検査すべき配管を、ベテランの勘ではなくデータで選ぶようにする」。
今まで:ベテランの勘で選ぶ → 検査会社に依頼
これから:AIでスクリーニング → 絞り込んだものを検査会社に依頼
このステップを一つ挟むだけで、属人化から脱却できるし、検査コストの最適化にもつながる。
100%の精度を持ったAIが降ってくるのを待つより、80%のスクリーニングを今日から始めるほうが、現場は確実に前に進みます。
予知保全の基本的な考え方については、こちらもあわせてご覧ください。
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