まほろば創研

予知保全×AI活用事例5選。導入企業の実際の効果もあわせて紹介

2026.05.21

コラム

#予知保全

#AI

#異常検知

「予知保全にAIを使うと、何がどう変わるの?」

最近よく聞く話ですよね。
でも、ネットで調べると「AI活用で設備保全を革新!」みたいな話ばかりで、現場の人間からするとピンと来ない

この記事では、予知保全にAIを使っている実際の企業事例を5つ紹介しながら、実際の効果をできる限り具体的な数字でお伝えします。

「そもそも予知保全って何?」という方は、まずこちらの記事からどうぞ。
予知保全とは?基本から導入ステップまでわかりやすく解説しています。

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そもそも予知保全でAIは何をしているのか

難しい話を抜きにすると、AIがやっていることはパターン認識です。

正常な時のデータを大量に学習して、「いつもと違う」を見つける。
やっていることはベテランの保全員さんと同じです。

ベテランは「音がおかしい」「振動がいつもと違う」と気づきますよね。
AIはセンサーのデータから、人間の五感では気づけない小さな変化を見つけます。

従来のやり方(しきい値監視)は、「振動が○○mm/sを超えたらアラート」のように決め打ちでした。
これだと、しきい値を超えた時にはもう手遅れ、ということがよくある。

AIは 「まだしきい値は超えていないけど、いつもと傾向が変わってきた」 という微妙な変化を検出できます。
ここが一番の違いです。

事例1:オムロン野洲工場 ── 半導体製造ラインの真空ポンプ

業界: 半導体製造
対象設備: 薄膜形成装置の真空ポンプ
使った技術: 振動センサー+機械学習(i-BELT オンサイトデータ活用サービス)

オムロンの野洲工場では、半導体の製造ラインにある真空ポンプが突然止まると、製造中のウェハーが大量に廃棄になっていました。

やったこと
真空ポンプに振動センサーを取り付けて、振動データをリアルタイムで複数の特徴量に変換。
ベテラン保全員の知見とAIを組み合わせて、異常の兆候を検出するモデルを構築しました。

結果
突発故障がゼロになりました。
さらに、メンテナンスコストが15%以上削減、メンテナンス間隔は30%以上延長
「必要な時だけ」保全する体制に切り替わったことで、ムダな部品交換もなくなっています。

ポイント
回転機械の振動データは、AIが最も得意とする領域です。オムロンのケースでは、ベテランの知見をAIに組み込んだことが成功の鍵でした。「AIだけ」でも「人だけ」でもなく、両方を組み合わせる。

事例2:JR西日本 ── 自動改札機の故障予測

業界: 鉄道
対象設備: 自動改札機・券売機・精算機(約2,000台)
使った技術: 機械学習(きっぷ詰まり頻度・搬送速度などの稼働データ+過去の故障履歴)

JR西日本では、駅の自動改札機が故障するとお客さんの流れが止まり、駅員が急行して対応する必要がありました。年間約4,000件の緊急出動が発生していました。

やったこと
各改札機の稼働データ(きっぷの詰まり回数、搬送速度の変化など)を毎週クラウドにアップロード。
AIが7日先の故障確率を機器ごとに算出し、リスクが高い順にランキング。

結果
点検作業が約30%削減(年間約14,000回の点検から)。
故障件数が約20%削減(年間約4,000件の緊急出動から)。
この取り組みは第6回インフラメンテナンス大賞「特別賞」を受賞しています。

ポイント
「どの機器から優先的に手を打つか」の優先順位付けにAIが効くケースです。2,000台すべてを同じ頻度で点検するのではなく、AIがリスクの高い機器を絞り込んでくれる。

予防保全との使い分けが気になる方は、こちらもあわせてご覧ください。
予知保全と予防保全の違い、どっちを選ぶべきかを現場目線で解説しています。

事例3:前川製作所 ── 産業用冷凍機の異常予測

業界: 食品・コールドチェーン
対象設備: 大型産業用冷凍コンプレッサー(NewTonシリーズ)
使った技術: 時系列データ分析AI(YE DIGITALと共同開発)、約30種類の運転指標を機械学習

食品工場や冷凍倉庫の冷凍機が壊れると、保管している食品がダメになります。
損失額は設備の修理代よりも、中の食品の方がはるかに大きい。

やったこと
冷凍コンプレッサーの約30種類の運転データ(圧力・温度・電流など)を遠隔で24時間収集。
AIが時系列データの微妙な変化パターンを学習し、故障の予兆を検出。

結果
テスト段階では故障の最大2ヶ月前に異常を検出。
実運用では約1週間前の段階で予兆を捉え、お客さんの生産スケジュールに合わせた計画的なメンテナンスが可能に。
突発停止による食品廃棄のリスクがなくなり、スペア部品の在庫コストも削減されました。

ポイント
「壊れた時の損失が大きい設備」にAIを入れることで、投資対効果が明確に出たケースです。冷凍機のように「止まったら中身がダメになる」設備は、予知保全の効果が最もわかりやすい。

事例4:花王 × アズビル ── 化学プラントのバッチプロセス異常予測

業界: 化学・日用品製造
対象設備: 和歌山工場のエステル製造設備(バッチプロセス)
使った技術: 多変量時系列分析AI(アズビル「BiG EYES」プラットフォーム)

花王の化学プラントでは、複数の製品を同じ設備で切り替えながら製造する「バッチプロセス」を採用しています。
製品ごとに運転パターンが違うので、「何が正常で何が異常か」の判断が非常に難しい。

やったこと
アズビルのAIプラットフォーム「BiG EYES」を導入。
製品ごとの運転パターンをAIに学習させて、バッチプロセスの異常を予測。
これは、連続プロセスではなくバッチプロセスにビッグデータAIを適用した先駆的な事例です。

結果
複数プロセスの同時監視が必要だった作業負荷が大幅に軽減。
ベテランの経験に頼っていた監視業務が標準化され、属人化が解消
この取り組みは第16回日本化学工業協会「レスポンシブル・ケア大賞」を受賞しています。

ポイント
「製品が変わると正常データも変わる」という難しい条件でも、AIが対応できることを示した事例。多品種少量生産の現場でAI予知保全を検討している方には参考になるケースです。

事例5:シーメンス アンベルク工場 ── 電子機器製造のスマートファクトリー

業界: 電子機器製造
対象設備: 工場内の10,000台以上の製造装置
使った技術: エッジAI+デジタルツイン+Senseye予知保全プラットフォーム

ドイツのシーメンスは、アンベルク工場で「スマートファクトリー」を実現しています。
10,000台以上の装置に振動・温度・音響センサーを設置し、AIがリアルタイムで異常を検知。

やったこと
装置ごとにデジタルツイン(仮想モデル)を構築し、1,000以上のシミュレーションを実行。
エッジAIがミリ秒単位でデータを処理し、品質異常と設備劣化を同時に監視。

結果
計画外のダウンタイムが30%削減
設備故障を7〜10日前に予測。
設備稼働率が15%向上、不良率は60%以上改善
年間3,500万ドル以上のコスト削減を達成。

ポイント
大規模な事例ですが、注目すべきは「最初から10,000台にAIを入れたわけではない」ということ。段階的に対象を広げていった結果がこの数字です。スモールスタートの原則は、規模が大きくなっても変わりません。

配管の腐食検査でも、AIによるスクリーニングの活用が進んでいます。
工場配管の腐食検査を映像×AIでスクリーニングする方法を解説しています。

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