「DXしないといけないのはわかっている。でも、いくらかけて、いくら返ってくるのかがわからない。」
製造業のシステム投資で一番多い悩みがこれです。
予知保全に限らず、設備管理のシステム化、IoT導入、AI活用。どれも「良さそう」なのはわかる。でも稟議に出す数字が作れない。
結果、「もう少し様子を見よう」で何年も経ってしまう。
この記事では、予知保全のシステム投資を例に、費用対効果をどう見積もればいいのかを具体的にお伝えします。
予知保全に限らず、製造業のシステム投資全般に使える考え方です。
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目次

費用対効果を見積もる前に、やるべきことがあります。
今の業務の流れを書き出すことです。
「そんなの、だいたいわかっているよ」と思うかもしれません。
でも、「だいたい」では数字は出せません。
おすすめは、業務フローチャートを作ること。
予知保全なら、設備の点検・異常発見・判断・対応・報告まで、一連の流れを書き出します。
ここで大事なのは、推進担当者やシステム会社だけで作らないこと。
必ず現場の人を巻き込んでください。
なぜか。
推進者だけで作ると、どうしても「想像」で埋めてしまいます。
「たぶんこのくらいの時間がかかっているだろう」「たぶんこういう流れだろう」。
この「たぶん」で作ったフローを元にシステムを設計すると、現場では使いづらいものができあがります。
実際に手を動かしている人に「この作業、どのくらいの頻度で、どのくらい時間かかっていますか?」と聞く。
地味ですが、これが費用対効果を正しく見積もる第一歩です。

業務フローができたら、それぞれの工程に2つの数字を入れていきます。
たとえば予知保全の対象になるような設備点検だと、こんな感じです。
これを全部書き出すと、「この作業に年間でこれだけの時間を使っている」という数字が見えてきます。
そして、システムを導入したらどの工程の時間がどれだけ減るかがわかる。
ここが費用対効果の「効果」の部分です。

全部の業務を効率化しようとすると、投資額が膨れ上がります。
大事なのは、インパクトが大きいところに絞ることです。
インパクトが大きい業務は、2つのパターンがあります。

たとえば、1時間に1回、計器の数値を見て回る作業。1回10分でも、1日8回やれば80分。年間で300時間以上になります。
こういう作業をセンサーとダッシュボードに置き換えれば、効果は大きい。

たとえば、突発故障が起きて設備が数日止まるケース。修理費だけでなく、ラインが止まっている間の生産損失、納期遅延の影響、代替手配のコスト。1回で数百万円の損失になることもあります。
予知保全はまさにこのパターンの対策です。
逆に、1回の時間も短くて、発生頻度も低い作業は手を出さない方がいい。
システム化してもインパクトが小さいので、投資を回収できません。

費用対効果の「効果」を計算するとき、多くの人は「作業時間 × 時給」だけで考えます。
それだけだと、効果が小さく見えてしまいます。
予知保全のようなシステム投資の場合、以下のコストも視野に入れてください。

ベテランの保全担当者を1人採用するのに、いくらかかっていますか?
求人広告、面接の工数、入社後の教育期間。しかも、設備保全ができる人材は市場に少ない。
システム化によって「ベテランでなくても判断できる」状態を作れれば、採用のハードルが下がります。

設備トラブルが起きたとき、保全担当者だけでなく、生産管理、品質管理、場合によっては営業まで巻き込まれます。
報告書の作成、顧客への説明、リスケジュール。こうした間接コストは、直接の修理費より大きいことも珍しくありません。

設備が止まっている間に作れたはずの製品。受けられたはずの注文。
「売上が減った」ではなく「売上を得る機会を失った」という見え方をすると、経営層には刺さります。

効果の数字が出たら、投資額と並べて何年で元が取れるかを計算します。
計算自体はシンプルです。
投資額 ÷ 年間の削減コスト = 回収期間(年)
たとえば、システム投資が800万円で、年間の削減効果が200万円なら、回収期間は4年。
体感的には、3〜5年で回収できるケースが多いです。
一見長く感じるかもしれませんが、システムは一度作れば効果が持続します。毎年同じ削減効果が積み上がっていくので、回収後はずっとプラスです。
ただし、これはあくまで「定量的に測れる部分」の話です。

費用対効果の計算で一番悩むのが、数字にしづらい価値の扱い方です。
たとえば、「ベテランが来年定年で、あの人がいなくなったら設備の異常に気づける人がいない」。
これは金額に換算しづらいけど、事業の継続性に関わる問題です。
ROI計算だけ見ると5年以上かかるケースでも、「ベテランの退職」「属人化の解消」という文脈を加えると判断が変わることがあります。
稟議書に書くなら、こんな構成がおすすめです。
「やったらいくら得するか」だけでなく、「やらなかったらいくら損するか」を並べる。
この両面で見せると、意思決定者は判断しやすくなります。
予知保全の基本的な考え方や導入ステップについては、こちらで詳しく解説しています。
予知保全とは?まずは「一番困る設備」1台から始めるのが正解
実際にAIを活用した予知保全の事例を知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
予知保全×AI活用事例5選。導入企業の実際の効果もあわせて紹介
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私たちもオンライン会議の時間がなかなか取れないので、まずはメールでやり取りしましょう。
この記事を書いた人
小森 一輝
まほろば創研株式会社 代表取締役
同志社大学文化情報学部卒。日本マイクロソフトにてAzureを活用したインフラ設計支援・生成AI導入を大手企業や官公庁向けに実施。技術書典にてAzure×AI活用の技術同人誌を頒布。現在はまほろば創研にて、検査会社との共同開発プロジェクトを含む予知保全特化のシステム・サービス開発に取り組んでいる。
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